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現代建築界が解けない巨匠の呪縛 国立西洋美術館・文化様式の大革命

THE PAGE - 8月13日(日) 10時0分

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(THE PAGE)

 東京上野公園内にある国立西洋美術館。20世紀建築の巨匠ル・コルビュジエの建築作品のひとつとして昨年、世界遺産に登録されました。

 ル・コルビュジエが高名な建築家であることは知られていても、どのような作品を遺し、日本の建築界にどのような影響を与えたか、一般にはあまり知られていません。建築と文学に関する著書でも知られる名古屋工業大学名誉教授、若山滋さんが、その足跡をたどります。

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霧のロンシャン

 ヨーロッパをヒッチハイクで放浪していた若いころのことだ。

 フランスの小さな田舎町、深い朝霧で先が見えないなか、ふもとからゆっくりと坂を上っていく。ゆるいカーブを曲りながら小高い丘の上に出ようとするとき、突如として空中に、黒々とした巨大なキノコのようなものが浮かび上がった。

 ル・コルビュジエが設計した「ロンシャンの礼拝堂」の屋根である。

 普通の建築なら、屋根はドームのように下向きにカーブしているのだが、この屋根は逆に、暴力的なほど力強く、上向きに反り返っている。壁は白く、窓がない代わりに、ところどころ大小いくつかの穴が穿たれている。

 中に入る。
 壁と天井の間がわずかに空いていて光が漏れる。壁の穴からもカラフルな光が差し込む。厚い壁に穿たれた穴の側面に原色が施されているので、外からの光も色彩を帯びるのだ。現代のステンドグラスは、モンドリアンの抽象画のように、軽快な荘厳を感じさせた。

理解しにくい世界遺産

 世界遺産に指定されることによって、話題になり人が押し寄せる。

 しかし最近指定された国立西洋美術館に関しては「なぜ、あれが世界遺産なのか」という声がよく聞かれる。たしかに、上野公園の一隅に、あまり目立つとはいえない「四角いコンクリートの箱」といったたたずまいだ。むしろその前に置かれた「考える人」「カレーの市民」「地獄の門」といったロダンの彫刻が強い存在感を放射している。

 コンクリートの箱は、太い円柱で持ち上げられ、閉鎖的な印象を与えるが、中に入って見れば、上からの自然光が取り入れられ、変化に富む立体的な空間となっており、その構成と各部の造形は、まさにル・コルビュジエの手になるものである。それが特別な印象を与えないのは、すでに彼の設計手法が日本に根付いているからに違いない。

 われわれはまずこの指定が、世界各地のル・コルビュジエの作品が一挙に指定されたものであることを認識する必要がある。

最大のカリスマ

 とはいえ、ル・コルビュジエの名を初めて聞く人も多く、建築家であることを知ってはいても、彼が何をしたのかよく理解する人は、専門家以外にはほとんどいないであろう。

 端的にいえば、ル・コルビュジエとは、建築モダニズム形成期における最大のカリスマであった。

 ワルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエとともに、インターナショナル・スタイル(国際様式)を確立した一人であり、フランク・ロイド・ライトを加えて「巨匠」とされるが、中でもコル(建築界の慣例にならって簡略化する)は、もっとも理論的であり、もっとも前衛的であり、またもっとも個
 

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